認知症当事者の視点からのインタビュー記事(2015/12/10)

認知症は高齢者だけがかかる病気ではありません。
12月10日の日経ビジネスオンラインに掲載された記事では、東北で自動車販売台数一位になったこともある働き盛りの元営業マンが、認知症にかかった経験についてインタビューに答えています。

自動車販売店で営業として実績を挙げていた丹野智文さんが若年性認知症と診断されたのは、39歳の時でした。
まだ30代で、小中学生の子供もいるのにと絶望していた丹野さんは、「認知症の人と家族の会」で、認知症になっても穏やかに、明るく力強く生きている認知症当事者に出会い、勇気づけられたといいます。その後、会社と相談して事務職に異動し自分なりに物忘れに対処する工夫をこらしながら、できる範囲の仕事を続けているそうです。
丹野さんは今、認知症の人の相談窓口「おれんじドア」を開設し、当事者以外にはなかなか理解してもらえない認知症の悩みを聞き、支援につなげる活動をしています。

インタビューの中で、認知症になったことを本人や家族がまだ受け入れられない初期の治療や支援が重要だと丹野さんは述べています。
一般企業で働いている丹野さんの例からも分かるように、認知症の初期は少しのサポートがあれば普通の生活を送ることができる人がほとんどです。しかし、すぐに何も分からなくなってしまうとか、暴れるといった偏見や思い込みがまだあるのも事実です。
中でも、認知症の症状としてよく知られている「徘徊」という言葉を、実態にそぐわないとして言い換える動きがあります。
「認知症の高齢者が安心して徘徊できる街」をスローガンに先駆的な認知症対策を行ってきた大牟田市では、患者から「意味なく歩き回っているわけではない」といった声が上がり、見直していくことになりました。

丹野さんの活動も、大牟田市の試みも、認知症の「当事者の視点」が重要とされつつある結果だといえます。

■参考URL

今も社員を継続、「認知症だから何もできない」と決めつけないで(日経ビジネスオンライン、12月10日)
「徘徊と呼ばない」運動広がる…認知症患者の尊厳守るため(読売新聞、12月10日)